AIが助けてくれるほど、「一緒に考える相手」が重要になる——Shared Agencyという設計

AIを使うと、自分で考えなくなるのでしょうか。
それとも、AIとの関わり方によっては、むしろ自分で考える力を支えることもできるのでしょうか。
この問いを考えるとき、「AIか人間か」という二者択一ではなく、その間にどんな関係がつくられているかを見る必要がありそうです。
AIのagencyが、人間のagencyを支える場合がある
2026年のXuらの研究では、大学生972人を対象に、AIの認知的支援・相互作用的支援・行動的支援とentrepreneurial thinkingの関係が検討されました。研究では、AIの支援とentrepreneurial thinkingの関係を、人間側のsense of agencyが媒介する経路が報告されています。
参照:Xu et al. (2026)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42387026/
またJuan・Lee・Wuによる16週間のGenAI協働学習の研究では、生成AIを人間の参加を置き換える存在としてではなく、人間の学習者とAIが役割を分担しながら進むshared agencyとして捉える可能性が示されています。
参照:Juan, Lee & Wu (2026)
https://doi.org/10.1016/j.compedu.2026.105564
これらの研究は、AIを使えば自動的にHuman Agencyが高まることを意味するものではありません。どのような支援が、どのような条件で、人間側の主体感や能力発揮につながるのかを考える必要があります。
HYMYの仮説:Agencyは「誰が何をしたか」だけでは決まらない
ここからはHYMYの仮説です。
AIとの協働におけるAgencyを、「最終的に誰がボタンを押したか」「誰が文章を書いたか」だけで測ると、重要な部分を見落とすかもしれません。
AIが候補を広げ、人間が問いを選ぶ。AIが比較材料を出し、人間が基準を決める。AIが別の見方を提示し、人間が意味をつくり直す。
このように、AIの働きが人間の次の問い・判断・対話へ戻ってくる循環があるなら、AIのagencyが人間のagencyを奪うのではなく、支える場合もあるのではないでしょうか。
HYMYではこの関係を、暫定的に Relational Agency Scaffold と捉えます。
「AIか人間か」ではなく、関係の配置を見る
設計上の問いは、「AIに任せるか」だけではなくなります。
AIは何を提案するのか。人間はどこで問いを立てるのか。他者との対話はどこに残るのか。AIの出力を受けたあと、人間側にどんな行為が返ってくるのか。
こうした関係の配置を見る必要があります。
AIが結論まで閉じてしまえば、人間は受け手になりやすくなります。反対に、AIの出力が新しい問い、比較、対話、再解釈を生むように設計されていれば、人間側のAgencyが次の行為へ接続されます。
Moon&Me / HYMYなら、どう設計できるか
Moon&Meでも、AIが本人の記録を読んで完成した解釈を返すだけではなく、本人がもう一度考えたくなる形へ返すことができます。
たとえば、AIが「あなたはこうです」と断定するのではなく、「この出来事には別の見方もありそうです。あなたにはどちらが近いですか」と返す。本人の回答を受けて、次の問いを調整する。必要なら、人との対話へ持っていける形に整理する。
AIが強くなるほど、人間が消える必要はありません。
AIの力を、人間の問い・判断・関係へ戻していく。
その循環をつくることが、Human Agencyを守るAI設計の一つになるのかもしれません。

