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AIに助けてもらったあと、自分で考える力は残るか——「解釈能力移転」という問い
AIに相談すると、自分ひとりでは思いつかなかった見方に出会えることがあります。悩みが整理されたり、自分の気持ちに名前がついたり、「そういうことだったのか」と腑に落ちたりします。 では、そのAIを閉じたあとには何が残るのでしょうか。 次に似た出来事が起きたとき、自分でも少し立ち止まって観察できるようになっているでしょうか。それとも、またAIに答えを聞かなければ考えられなくなっているでしょうか。 AIが役立ったことと、自分の力が育ったことは同じではありません 2026年8月にChristoph Trattnerが発表した Epistemic Transfer in AI-Assisted Verification: A Framework and Evaluation Protocol は、AIを使った情報検証を「ツールを使っている最中」だけで評価することに疑問を投げかけています。 この研究が提案するのは、AI支援を経験したあと、新しい情報に対してAIなしで判断する力がどう変わったかを測るという考え方です。Trattnerはこれを epistemic
16 時間前読了時間: 3分


AIが偏っていると知っていても、影響は消えない——「気づいている」だけでは守れない認識主権
「AIが間違うことくらい、分かっています」 生成AIを使い慣れている人ほど、そう思うかもしれません。私もそうです。 AIはいつも正しいわけではない。こちらに話を合わせすぎることもある。もっともらしい間違いを言うこともある。 それを知っていれば、AIの言葉に振り回されずに済むのでしょうか。 最近の研究からは、少し気になる答えが見えてきています。「AIには偏りがある」と分かっていても、そのAIから受ける影響まで消えるとは限らないのです。 「このAIはあなたに合わせすぎます」と警告してみる 2026年、Lujain Ibrahim、Myra Cheng、Cinoo Lee、Pranav Khadpe、Desmond Ong、Dan Jurafsky、Diyi Yangらは、2,610人を対象に興味深い実験を行いました。 参加者は、自分が経験した人間関係の葛藤についてAIと対話します。そのAIには、利用者に合わせすぎてしまう傾向がありました。利用者の考えに問題がある場合でも、同意したり肯定したりしやすいAIです。 一部の参加者には、あらかじめ
2 日前読了時間: 5分


「分かってもらえなかった」のあとに何が起きるか——AIとの解釈を修復するという設計
AIに自分のことを話していて、「いや、そういう意味じゃないんだけどな」と思ったことはありませんか。 人との会話でも同じです。こちらは悲しかったと言っているのに、「つまり怒っているんだね」と決めつけられたり、ただ話を聞いてほしかったのに、勝手に解決策を出されたりすることがあります。 そんなとき、本当に大切なのは、最初から一度も誤解されないことでしょうか。 私は最近、「間違えないこと」よりも、「間違えたあとに分かり直せること」のほうが大切なのではないかと考えています。 「違います」と言える相手は、信頼できる どれだけ親しい人でも、相手の気持ちを毎回正確に理解することはできません。AIなら、なおさらです。 問題は、誤解が起きることそのものではありません。 「違います」と言ったときに、相手がそれを受け止められるか。「私はこう理解したけれど、違ったかもしれない」と、自分の解釈をいったん手放せるか。そして、もう一度話しながら、「では、どういうことだったのだろう」と一緒に考え直せるか。 こうしたやり取りができるなら、一度の誤解がそのまま関係の失敗に
3 日前読了時間: 4分


AIに答えを任せても、「理解の主体」でいられるか——認識主権を守るAI設計
AIに相談すると、以前なら何十分も考えていたことに、数秒で筋の通った答えが返ってきます。 それは便利です。しかし、AIがうまく考えてくれるほど、一つの問いが残ります。 答えが自分に合っていることと、その理解が「自分のもの」であることは、同じなのでしょうか。 AI時代の自律性は、「自分で全部やること」ではない AIと人間の自律性を扱う近年の研究では、autonomyは一枚岩ではないと指摘されています。 Roberta Fischli、Matija Franklin、Arianna Manziniらの Agents, Alignment, and the Many Faces of Autonomy (2026) は、AI agentを人間のautonomyと整合させようとしても、そもそもautonomyには複数の構成要素と競合する理解があり、「自律性を高めるAI」が何をすべきかは簡単には決められないと論じています。 参照:Fischli, R., Franklin, M., Manzini, A., et al. (2026), Agents, A
4 日前読了時間: 3分


AIが「あなた向け」と判断しても、あなたには響かない——パーソナライゼーションを人間側から測る
AIが「あなたのために書きました」と返してくれた文章を読んで、たしかに自分らしい。でも、なぜかそれほど役に立たない——そんなことがあります。 パーソナライゼーションというと、AIが利用者の好みや過去の会話をどれだけ正確に理解できるかが注目されます。しかし、そこで一つ見落とされやすい問いがあります。 AIが「よく個人化できた」と判断することと、本人が「これは自分にとって役に立つ」と感じることは、同じなのでしょうか。 実際の人間を入れると、評価が変わる 2026年、Lechen Zhang、Jiarui Liu、Tal Augustによる研究 Re-Centering Humans in LLM Personalization は、LLMのパーソナライゼーションを実際の人間の会話と評価で検証しました。 研究では550件の人間の会話を収集し、①会話から利用者属性を抽出する、②新しい問いに関連する属性を選ぶ、③その属性を使ってpersonalized responseを生成する、という3段階を調べています。 ここで重要なのは、人間のデータを使うと、システ
5 日前読了時間: 3分


AIが私を理解するほど、世界は狭くなる?——多様性を保つパーソナライゼーション
AIが私をよく知るほど、より良い結果になるのでしょうか AIのパーソナライゼーションは、基本的には「その人に合うほど良い」という方向で進んできました。 過去の記録を覚え、好みを理解し、以前の会話を踏まえ、自分に合った言葉で返してくれる。たしかに、それは便利です。 でも、ここには少し逆説があります。 AIが私をよく理解するほど、AIは「私らしいもの」を返すようになります。では、その循環が続いたとき、私はまだ自分の外側にある見方と出会えるのでしょうか。 昨日のHYMY Journalでは、AIとの継続的な対話によって、人間側の解釈や自己概念が似た方向へ収束する可能性を考え、Interpretive Diversity Resilience(解釈多様性レジリエンス)というResearch Seedを提示しました。 今日は、その問題を人間側ではなく、AIの設計側から考えてみます。 個人には合っていても、集団では似ていく 生成AIによるアイデア生成については、一つひとつの出力の質が高くても、多数の出力を集めると似たテーマへ収束しやすいという問題が研究されて
6 日前読了時間: 4分


AIは、私たちの考え方まで似せていくのか——「解釈の多様性」を守るという設計
AIが間違った答えを返すことは、わかりやすい問題です。 でも、AIがかなり良い答えを返し続けるときに起きる問題は、もっと見えにくいものです。 みんなが、少しずつ同じ見方をするようになるかもしれない。 2026年、Nature Reviews Psychologyに掲載されたComment “Metacognition can mitigate AI-driven homogenization of ideas” は、生成AIが人口レベルのアイデア分布を変え、collective cognitive diversity、creativity、long-term innovationを低下させる可能性を論じています。 研究者らが緩和策として挙げているのは、intellectual humility、metacognitive flexibility、perspectival metacognitionです。 重要なのは、これは「AIが悪いことを言う」という話ではないことです。 むしろAIが便利で、説得力があり、いつでも一定水準の説明を返してく
7 日前読了時間: 5分


Journal #006|なぜ音楽を研究し始めたのか
音楽を作りたかったわけではありません。 むしろ、ずっと知りたかったのは別のことです。 なぜ、ある音楽は人の身体を震わせ、前向きに生きる力を生み出すのか。 同じ曲を聴いても、何も感じない人がいます。 一方で、涙が出る人もいます。 勇気が湧く人もいれば、過去の記憶が蘇る人もいます。 なぜ、その違いが生まれるのでしょうか。 HYMYではこれまで、「自分を知ること」をテーマに研究を続けてきました。 Moon&Meも、その延長線上にあります。 でも最近、少しずつ考えが変わってきました。 私たちが本当に知りたいのは、「自分とは何か」ではなく、 何によって、自分の世界の見え方が変わるのか。 なのではないか、と。 例えば、同じ景色を見ても、昨日と今日では違って見えることがあります。 同じ出来事でも、励まされた翌日には「挑戦してみよう」と思えることがあります。 反対に、疲れている日は、何を見ても灰色に感じることがあります。 世界は変わっていない。 変わっているのは、自分と世界との関係です。 この変化に強く惹かれています。 音楽は、その変化をもっとも鮮やかに引き起こ
7月29日読了時間: 3分


Journal #005|AI時代に、人間が失ってはいけないもの。
AIは、驚くほど賢くなりました。 分からないことを尋ねれば、 数秒で答えを返してくれる。 文章を書き、アイデアを出し、 プログラムを作り、画像まで生成できる。 これから先、AIはますます 私たちの仕事や暮らしを支えてくれるでしょう。 私は、それをとても前向きに捉えています。 AIは、人間の可能性を広げる技術です。 けれど、その一方で、 一つだけAIには代われないものがあります。 それは、「問いを立てること」です。 もちろんAIは、質問に答えることも、 新しい問いを提案することもできます。 でも、その問いに価値を感じるのは人間です。 「なぜ私はこの問いに惹かれるのだろう。」 「本当に知りたいことは何だろう。」 その問いは、 自分自身を観察する中からしか生まれません。 だから私は、AI時代だからこそ、 自分を観察する時間がこれまで以上に大切になると思っています。 効率はAIに任せる。 けれど、自分が何に心を動かされ、 何を美しいと感じ、何を大切にしたいのか。 その答えは、自分の中にしかありません。 AIが進化するほど、 人間は「答えを持つこと」ではな
7月22日読了時間: 1分


Journal #004|発見は、能力ではなく習慣である。
「私は好奇心がないから。」 「発見するのが苦手だから。」 そんな言葉を耳にすることがあります。 けれど、本当にそうなのでしょうか。 私たちは、発見とは特別な才能ではなく、 日々の習慣によって育まれるものだと考えています。 ⸻ 子どもは、小さなことにも驚きます。 道端の花を見つけて立ち止まり、 虫の動きをじっと眺め、 空の色が変わるだけで嬉しそうに話します。 一方、大人になるにつれて、 私たちは効率を重視するようになります。 目的地へ急ぎ、 通知を確認し、 次の予定を考えながら歩く。 同じ景色を見ていても、 見えているものは少しずつ変わっていきます。 発見は、 「見るもの」が変わることではありません。 「見方」が変わることです。 昨日まで気づかなかったことに気づく。 当たり前だと思っていたことを、もう一度見つめ直す。 それだけで、世界は少し違って見えます。 ⸻ だからHYMYでは、 発見を「能力」ではなく「習慣」と考えています。 毎日ほんの数分でも、 自分に問いを投げかける。 今日、心が動いたことは何だったか。 なぜ、その出来事が印象に残ったのか。
7月15日読了時間: 2分


Journal #003 |なぜ、答えではなく問いをつくるのか。
AIは、驚くほど多くの答えを返してくれるようになりました。 分からないことがあれば、すぐに検索できる。 文章も、アイデアも、コードも、数秒で生成できる。 これから先、答えを得ることは、 ますます簡単になっていくでしょう。 では、人間に残される価値とは何でしょうか。 私たちは、 それは「問いを持つこと」だと考えています。 良い問いは、 新しい発見を生みます。 問いが変われば、 世界の見え方が変わります。 世界の見え方が変われば、 人生の選択も変わります。 だからHYMYのプロダクトは、 答えを押しつけません。 Moon&Meも、 あなたを分類するためのアプリではありません。 あなた自身が、 自分に問いを投げかけ、 新しい発見に出会うための時間をつくること。 それが目的です。 私たちは、 答えを届ける会社ではありません。 発見が生まれる場をつくる会社です。 そして、 その発見は、いつも一つの問いから始まります。
7月8日読了時間: 1分


Journal #002 |人は、それぞれ違う世界を見ている。
同じ夕焼けを見ても、 美しいと感じる人もいれば、明日の天気を考える人もいます。 同じ言葉を聞いても、 励まされる人もいれば、傷つく人もいます。 同じ出来事なのに、 なぜ人によって見え方はこれほど違うのでしょうか。 私たちは、 この問いに強く惹かれています。 HYMYでは、 この「世界の見え方」を Worldview(世界観) と呼んでいます。 Worldviewとは、世界についての意見ではありません。 世界をどのように知覚し、意味づけ、 行動へつなげているかという、 その人固有の見え方の構造です。 世界観は、 生まれ育った環境や経験、文化、価値観によって 少しずつ形づくられます。 だから、違う世界観を持つ人同士が、 互いを理解できないことは自然なことです。 けれど、「違う」という事実を知ることは、 理解の始まりでもあります。 私たちは、世界観の違いをなくしたいのではありません。 違いを理解し、その違いから学べる社会を目指しています。 HYMYの研究は、 「人はどのように世界を見ているのか」という問いから始まります。 その探究は、 誰かを分類するた
6月24日読了時間: 1分


Journal #001 |人生を、消費から発見へ。
私たちは、毎日たくさんのものを消費しています。 ニュースを読み、動画を見て、SNSを眺め、 AIに質問し、答えを受け取る。 便利な時代になりました。 けれど、その一方で、 こんな問いを自分に向ける時間は減っているのではないでしょうか。 今日、私は何を発見しただろう。 発見とは、新しい知識を得ることだけではありません。 いつも見ていた景色の美しさに気づくこと。 子どもの何気ない一言に、新しい世界を見ること。 昨日まで苦手だと思っていた自分を、少し違う角度から理解できること。 人生を豊かにするのは、 情報の量ではなく、発見の深さなのかもしれません。 HYMYは、「消費」を否定したいわけではありません。 AIも、インターネットも、 私たちの可能性を広げる素晴らしい技術です。 だからこそ、 その便利さの先にある「発見する時間」を取り戻したいと考えています。 私たちが目指しているのは、 答えを増やす社会ではありません。 一人ひとりが、自分自身や身近な世界を 新しい目で見つめ直し、「発見」を積み重ねていける社会です。 人生を、消費から発見へ。 それが、HYM
6月10日読了時間: 1分
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